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草壁シトヒ
ブロガー
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『パンダコパンダ』はジブリじゃない!?でも実はジブリの原点だった!

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「パンダコパンダって、ジブリ作品だと思っていた!」私が初めてこの事実を知った時、思わず声が出ました。あなたも同じように感じているかもしれません。あの温かい雰囲気、魅力的なキャラクター、そしてどこか懐かしい物語は、まさにジブリそのものに感じられます。

実は『パンダコパンダ』はスタジオジブリ設立(1985年)より10年以上も前、1972年に公開された作品です。しかし、制作会社が違うからといって無関係だと切り捨てるのは早計です。この作品には、後のジブリ作品の根幹をなす要素がふんだんに盛り込まれており、まさに「ジブリの原点」と呼ぶにふさわしい傑作なのです。

この記事を読めば、『パンダコパンダ』がいかにしてジブリの礎を築いたのか、その秘密のすべてがわかります。

タップできる目次

パンダコパンダとジブリ作品の共通点

私が『パンダコパンダ』を観ていつも感じるのは、後のジブリ作品に通じる確かな作家性の息吹です。制作会社が違うとは思えないほど、多くの共通点を見出すことができます。

自然との共生

『パンダコパンダ』では、ミミ子の家のそばにある竹やぶが物語の重要な舞台となります。この何気ない日常の中の自然風景は、『となりのトトロ』の雄大なクスノキや森を思い起こさせます。

2作目の『雨ふりサーカスの巻』では、大洪水を悲観せず、ベッドを船にして冒険に出かけます。この災害さえも遊びに変えてしまうたくましさは、後の『崖の上のポニョ』で描かれる、水没した街を冒険する宗介の姿と重なります。自然の脅威と美しさを描き、それと共に生きる姿勢は、ジブリ作品に一貫して流れるテーマです。

子ども目線の物語

この作品の素晴らしい点は、徹底して子どもの論理で世界が描かれていることです。主人公のミミ子は、突然現れた言葉を話すパンダ親子を少しも怖がらず、すぐに家族として受け入れます。私が特に好きなのは、この純粋な子どもの視点を、周囲の大人たちも最終的に受け入れてしまうところです。

この「悪役のいない世界」の構造は、『となりのトトロ』をはじめとする多くのジブリ作品に共通します。対立は誤解から生まれるもので、悪意によるものではありません。この安心感に満ちた世界観こそ、ジブリ作品が世代を超えて愛される理由の一つです。

ユーモアあふれる演出

キャラクターたちの生き生きとした動きは、観る人を笑顔にします。特にミミ子が喜びを表現するY字の倒立や、パンちゃんがコロコロと転がる様子は、見ているだけで心が和みます。

こうしたコミカルで愛情のこもった動きの描写は、キャラクターの内面を雄弁に物語る「演技」として機能しています。この「動きで感情を伝える」というアニメーション哲学は、ジブリ作品のキャラクターたちが持つ圧倒的な生命感の源流と言えるでしょう。

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パンダコパンダの独特な特徴

『パンダコパンダ』はジブリの原型であると同時に、それ自体が唯一無二の魅力を持つ傑作です。私が特に心を惹かれる、この作品ならではの特徴を紹介します。

印象的な音楽

本作の音楽は、ジャズピアニストの佐藤允彦氏が手掛けています。その軽快で温かみのあるメロディは、作品全体の陽気な雰囲気を完璧に作り上げています。

主題歌「ミミちゃんとパンダ・コパンダ」の、一度聴いたら忘れられない楽しげなリズムは、子どもたちの心を一瞬で掴みます。この音楽が、日常に潜むワクワク感を増幅させているのは間違いありません。

個性豊かなキャラクター

本作のキャラクターは、驚くほど深い背景を持っています。

キャラクター原型・特徴
ミミ子原作者アストリッド・リンドグレーンの『長くつ下のピッピ』が原型。おさげ髪、驚異的な腕力、そして何より自立心旺盛な性格はピッピそのものです。宮崎駿氏と高畑勲氏がアニメ化を熱望したものの叶わず、その情熱がミミ子というキャラクターに注ぎ込まれました。
パパンダ宮崎駿氏が当時住んでいた所沢の雑木林にいると想像した「お化け」がアイデアの源流。この優しく巨大な守り神のような存在が、後の『となりのトトロ』のトトロへと繋がっていきます。
パンちゃん好奇心旺盛で愛らしい子パンダ。ミミ子との微笑ましいやり取りは、物語に温かい彩りを添えます。
トラちゃん『雨ふりサーカスの巻』に登場する、サーカスから逃げ出したトラの子供。新しい家族の一員として迎え入れられます。

私が思うに、ミミ子とパパンダという二人の主人公は、西洋の児童文学と日本の土着的な精霊という、異なる源流が見事に融合した奇跡的な存在です。

シンプルなストーリーで心を打つ

物語の核は非常にシンプルです。それは、血の繋がりを超えた「みなしご家族(Found Family)」の誕生と、その温かい日常です。

両親のいないミミ子が、同じく母親のいないパンちゃんの「母親」になり、パパンダがミミ子の「父親」になる。この役割分担によって生まれる新しい家族の形は、現代の私たちにも深く響く普遍的なテーマを描いています。複雑な設定がなくても、これほどまでに心に響く物語を創造できることに、私はいつも感動を覚えます。

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パンダコパンダがジブリ作品に与えた影響

『パンダコパンダ』は、単に作風が似ているというだけではありません。後のジブリ作品の根幹をなす「設計図」そのものであったと言っても過言ではないのです。

手描きアニメーションの美しさ

本作の作画監督を務めたのは、大塚康生氏と小田部羊一氏という日本アニメーション界のレジェンドです。彼らの手によって、キャラクターにはまるで触れることができそうなほどの重量感と生命感が与えられました。

パパンダのどっしりとした存在感や、ミミ子の軽やかな動きなど、キャラクターの感情や個性を動きで表現する「人格を語るアニメーション」は、ジブリ作品の真骨頂です。その原点が、この作品ではっきりと確立されています。

普遍的なテーマの探求

『パンダコパンダ』で描かれたテーマは、後のジブリ作品で繰り返し探求されることになります。

  • 自立したヒロイン|ミミ子に始まり、ナウシカ、キキ、千尋へと続く、強く能動的な少女像の原型です。
  • 日常の賛美|何気ない日常の中にこそ、美しさや冒険が潜んでいるという視点は、特に高畑勲監督作品に色濃く受け継がれています。
  • 悪役の不在|人格的な悪意ではなく、状況や誤解が対立を生むという物語構造は、ジブリ作品の優しさの源です。

これらの要素が、スタジオジブリという組織が生まれる10年以上も前から存在していた事実に、私は驚きを禁じ得ません。

高畑勲と宮崎駿の才能の融合

この作品は、演出の高畑勲氏と、原案・脚本・画面設定の宮崎駿氏という、伝説的なコンビの才能が初めて本格的に融合したプロジェクトです。

ファンタジーの世界にリアルな生活感を持ち込む高畑氏の演出と、魅力的なキャラクターと世界観を構築する宮崎氏の創造性。この二人の化学反応こそが、『パンダコパンダ』を不朽の名作たらしめ、そして後のスタジオジブリの成功を約束したのです。

時代を超えて愛される理由

公開から50年以上経った今でも、『パンダコパンダ』は展覧会が全国で開催されるなど、新たなファンを獲得し続けています。その告知では「高畑・宮﨑作品の源流」と紹介されることが多く、多くの人がジブリのルーツとして本作に触れています。

ジブリ作品が好きな人ほど、『パンダコパンダ』を観ることで、あの魔法のような物語がどこから来たのかを発見できるでしょう。まさに「必修科目」ともいえる作品なのです。

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まとめ

『パンダコパンダ』は、制作会社の名義上はスタジオジブリの作品ではありません。しかし、その魂、哲学、そして作り手の情熱において、これほど「ジブリ的」な作品は他にないでしょう。

自立した少女、優しき守護者、日常に宿るファンタジー、そして生命感あふれるアニメーション。後のジブリ作品を彩るすべての要素が、この短くも美しい物語の中に凝縮されています。私が『パンダコパンダ』を「ジブリの原点」と呼ぶ理由はここにあります。

もしあなたがまだこの傑作に触れたことがないなら、ぜひ一度ご覧になってください。きっと、あなたの知るジブリの世界が、さらに深く、豊かなものになるはずです。

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