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草壁シトヒ
ブロガー
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『火垂るの墓』は放送禁止ではない!7年間地上波でやらなかったヤバい理由とは?

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「火垂るの墓は内容が悲惨すぎるからテレビで放送禁止になった」という噂を聞いたことはありませんか。実際に、2018年から2025年までの7年間、地上波で放送されなかったため、この噂を信じている人も多いようです。しかし、私が調べた結論から言うと、この作品は放送禁止ではありません。

では、なぜこれほど長い間テレビで観ることができなかったのでしょうか。そこには、単なる「悲しい物語だから」という理由だけでは片付けられない、複雑で根深い3つの理由が存在します。この記事では、なぜ『火垂るの墓』がテレビから姿を消したのか、その驚きの真相に迫ります。

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地上波放送禁止説はデマ!『火垂るの墓』がテレビから消えた本当の理由

『火垂るの墓』が長年テレビ放送されなかったのは、決して放送禁止になったからではありません。日本テレビの社長もこの噂を明確に否定しています。私が調査した結果、放送が途絶えた背景には、大きく分けて3つの根深い理由が絡み合っていることが分かりました。

理由1|ジブリ作品でありながら「ジブリの所有物」ではなかった特殊な事情

この物語の根幹には、まず著作権の問題が存在します。多くの人が『火垂るの墓』を他のジブリ作品と同じだと考えていますが、実は製作の経緯と権利の所在が全く異なります。この特殊な立ち位置が、放送の機会を減らす最初の大きな壁となりました。

理由2|観るのがつらすぎる…視聴率低下が招いた商業的な判断

次に、作品の内容そのものが持つ「重さ」が、商業的な壁を生み出しました。「傑作だけど、二度と観たくない」という感想に代表されるように、その悲痛な物語は視聴者に大きな精神的負担を強います。この「観るのがつらい」という感情が、テレビ放送の生命線である視聴率に直接影響を与えたのです。

理由3|作り手が込めた「反戦映画」ではない真のテーマ

最後に、この作品が単純な「反戦映画」ではないという点が、放送を難しくしている要因です。原作者の野坂昭如氏と監督の高畑勲氏が作品に込めたメッセージは、一般的に考えられているものよりも遥かに複雑で、社会への鋭い問いかけを含んでいます。この深すぎるテーマ性が、お茶の間で気軽に放送するには不向きだったのです。

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「ジブリ作品」の例外?複雑な権利問題

『火垂るの墓』が他のジブリ作品と一線を画す最大の理由は、その誕生の経緯にあります。結論から言うと、この作品はスタジオジブリではなく、原作小説の出版社である「新潮社」が著作権を保有しています。この事実が、テレビ放送の運命を大きく左右しました。

『となりのトトロ』と同時上映するための苦肉の策

事の発端は、宮崎駿監督の『となりのトトロ』の企画でした。当時、スタジオジブリのプロデューサーだった鈴木敏夫氏は、『トトロ』の製作資金集めに苦戦していました。そこで鈴木氏が打ち出したのが、文学的評価の高い野坂昭如氏の『火垂るの墓』をアニメ化し、『となりのトトロ』と二本立てで上映するというアイデアでした。教育的価値のある作品とセットにすることで、出資を得やすくしようという狙いがあったのです。

原作の出版社「新潮社」が著作権を保有

しかし、ジブリの親会社である徳間書店は出資に慎重なままでした。そこで鈴木氏が頼ったのが、原作の版元である新潮社です。当時、映像事業への進出を考えていた新潮社はこの提案を受け入れ、『火垂るの墓』の製作に出資することを決定しました。この決断により、『火垂るの墓』の著作権は新潮社が持つことになり、『となりのトトロ』の権利を持つ徳間書店とは別の扱いになったのです。

日本テレビの放送戦略から外れた「社外の資産」

この権利の分断は、テレビ放送に大きな影響を与えました。多くのジブリ作品を放送してきた日本テレビにとって、ジブリ作品は自社のブランド価値を高める重要なコンテンツです。しかし、『火垂るの墓』は新潮社の資産であり、日本テレビから見れば「外部の作品」です。放送する際は、その都度、新潮社と交渉して放送権料を支払う必要があります。そのため、他のジブリ作品のように継続的に放送するサイクルには組み込まれにくく、結果として放送回数が限られてしまったのです。

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データが示す現実。視聴率の低下とメディアの変化

『火垂るの墓』が放送されにくくなった、より直接的な理由は視聴率の低下です。テレビ局にとって視聴率は広告収入に直結する生命線であり、この数字が低迷すれば放送を見送るのは当然の経営判断と言えます。

驚異の20%超えから歴代ワーストへ|視聴率の推移

過去の放送データを振り返ると、その現実は明らかです。『火垂るの墓』はかつて、驚異的な視聴率を記録していました。しかし、時代と共にその数字は下降線をたどります。

放送日平均視聴率 (%)備考
1989年8月11日20.9%初放送
2001年8月10日21.5%歴代最高視聴率
2007年9月21日7.7%
2009年8月14日9.4%
2013年11月22日9.5%
2015年8月14日9.4%
2018年4月13日6.7%高畑勲監督追悼放送、歴代最低視聴率

2001年には21.5%という高視聴率を記録したものの、その後は徐々に低下し、2018年の高畑勲監督の追悼放送ですら、歴代最低の6.7%に落ち込みました。この数字が、放送局に7年間もの休止を決断させた最大の理由であることは間違いありません。

「二度と観たくない」視聴者の本音

なぜ視聴率は低下したのでしょうか。それは、この作品が持つ強烈な悲劇性にあります。母親の死、飢餓、社会からの孤立、そして兄妹の死という救いのない物語は、視聴者に深い感動と同時に大きな精神的消耗を与えます。「素晴らしい作品だけど、あまりにもつらくて何度も観る気にはなれない」という声が非常に多いのです。この「再視聴のハードルの高さ」が、視聴率の低迷に直結しています。

テレビ離れと配信サービスの台頭

視聴率低下の背景には、メディア環境の変化も影響しています。かつてはテレビが娯楽の中心でしたが、今はNetflixのような動画配信サービス(VOD)や専門チャンネルが普及しました。視聴者は、わざわざテレビの放送時間を待たなくても、自分の好きな時に、好きな作品を選んで観られるようになりました。特に『火垂るの墓』のような重いテーマの作品は、精神的な準備をして個人の空間で鑑賞したいと考える人が多く、地上波のプライムタイムという「家族団らん」の時間帯には馴染まなくなってきたのです。

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「反戦映画」という誤解。高畑監督が本当に伝えたかったこと

『火垂るの墓』が放送されにくい最後の理由は、そのテーマの複雑さにあります。多くの人はこの作品を「戦争の悲惨さを訴える反戦映画」だと捉えています。しかし、作り手の意図はもっと深く、単純な反戦メッセージだけでは語り尽くせません。

原作者・野坂昭如の個人的な「贖罪」の物語

原作者の野坂昭如氏にとって、この物語は自身の体験に基づく「贖罪」でした。彼は実際に戦争で妹を亡くしており、その時に妹を守れなかった後悔と罪悪感を込めてこの小説を執筆したのです。物語の主人公である清太は、実際には妹に優しくできなかった自分を理想化した存在だと語っています。

高畑監督が描いたのは「戦時下の社会」と「孤立する個人」

一方で、アニメ映画を監督した高畑勲氏は、この作品が「反戦映画」と呼ばれることを明確に否定していました。高畑監督が焦点を当てたのは、戦争そのものではなく、「戦時下という極限状況で社会システムが崩壊し、人々が共感能力を失っていく様子」でした。そして、主人公の清太を、プライドの高さゆえに社会から孤立し、結果的に自分と妹を死に追いやってしまう、現代にも通じる若者として描いたのです。

単純な反戦メッセージではないからこそ放送しにくい

高畑監督の解釈は、「戦争が悪い」という分かりやすいメッセージを超えています。「危機的な状況で、社会や共同体は個人を救えるのか」「個人の選択が悲劇を招くこともある」といった、より普遍的で、観る者に重い問いを突きつけます。このような複雑で批評的なテーマは、お茶の間で共有するにはあまりにも重く、議論を呼びかねません。放送局が、このような不快感や気まずさを生む可能性のある作品の放送をためらうのは、自然なことと言えるでしょう。

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【朗報】7年の沈黙を破り『火垂るの墓』が帰ってくる!

ここまで『火垂るの墓』がテレビから遠ざかっていた理由を解説してきましたが、ファンにとっては嬉しいニュースがあります。7年間の沈黙を破り、ついにこの作品が私たちの元へ帰ってきます。

2025年8月15日、金曜ロードショーで放送決定

2025年の終戦記念日にあたる8月15日(金)、日本テレビの『金曜ロードショー』で『火垂るの墓』が放送されることが決定しました。7年ぶりとなる地上波での放送は、改めてこの作品が持つ意味を考える貴重な機会となるでしょう。

Netflixでの配信開始|これからはいつでも観られる

さらに、2025年7月15日からは、Netflixで日本国内での独占配信がスタートしました。これはスタジオジブリ関連作品としては、国内のサブスクリプションサービスで配信される初の事例です。

これにより、テレビの放送時間を待つ必要なく、自分のタイミングでいつでも『火垂るの墓』を鑑賞できるようになりました。放送という形が難しくなった作品にとって、配信サービスはまさに理想的な居場所を見つけたと言えます。

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まとめ

『火垂るの墓』が「放送禁止になった」という噂は、事実ではありません。長年テレビで放送されなかった本当の理由は、以下の3つの要因が複雑に絡み合った結果です。

  1. 権利の問題|著作権をジブリではなく新潮社が保有している特殊な作品だった。
  2. 商業的な理由|内容の悲惨さから視聴率が低迷し、放送が見送られるようになった。
  3. テーマの複雑さ|単純な反戦映画ではなく、社会や個人を問う深いテーマ性が放送には不向きだった。

これらの理由から地上波での放送機会は減ってしまいましたが、作品の価値が失われたわけではありません。2025年の金曜ロードショーでの放送決定、そしてNetflixでの配信開始により、『火垂るの墓』は新しい時代に合った形で私たちに感動と問いを投げかけ続けてくれるでしょう。

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