スタジオジブリには、映画館では観られない特別な短編映画が存在します。その中でも、私が特に心を奪われた作品が『くじらとり』です。この作品は、宮崎駿監督が長年温めてきた夢を形にした、まさに宝石のような16分間の物語です。子どもたちの純粋な想像力が爆発する、心温まる冒険の世界へとあなたをご案内します。
この記事では、『くじらとり』の基本情報から、気になるあらすじ、そして作品を深く味わうための見どころまで、私の視点で徹底的に解説します。
ジブリ短編『くじらとり』の基本情報
『くじらとり』は、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で上映するために作られたオリジナル短編アニメーションの第一作目です。その芸術性は高く評価され、数々の賞も受賞しています。私がこの作品の背景を知ったとき、宮崎監督の原作への深い愛情とリスペクトに感銘を受けました。
作品の基本的な情報を以下の表にまとめました。
項目 | 詳細 |
邦題 | くじらとり |
---|---|
制作 | スタジオジブリ |
監督・脚本 | 宮崎駿 |
原作 | 中川李枝子(作)、大村百合子(絵)の児童書『いやいやえん』 |
公開年 | 2001年 |
上映時間 | 約16分 |
主な受賞歴 | 第56回毎日映画コンクール・大藤信郎賞 |
声の出演 | 石原圭人、小野寺真央、伊勢裕樹 |
ジブリ短編『くじらとり』のあらすじ
物語の舞台は、ちゅーりっぷ保育園の「ほしぐみ」。子どもたちが遊んでいると、部屋の積み木がみるみるうちに船「ぞうとらいおんまる」へと姿を変えます。子どもたちは船に乗り込み、想像の海へと「くじらとり」に出発します。
彼らの航海は困難の連続です。大きな嵐に見舞われ、船が壊れそうになる場面もあります。しかし、子どもたちは力を合わせて乗り越え、ついに大きくて優しいくじらと出会います。タイトルは「くじらとり」ですが、子どもたちはくじらを捕まえるわけではありません。彼らは友達になり、一緒に楽しく遊びます。
陸に上がったくじらに花輪をプレゼントし、みんなで記念撮影をするシーンは、この物語の優しさを象徴しています。お別れの時、子どもたちは名残惜しそうにくじらを見送ります。くじらは子どもたちの友情を胸に、静かに大海原へと帰っていくのです。
ジブリ短編『くじらとり』の見どころ
約16分という短い時間の中に、この作品の魅力がぎゅっと詰まっています。私が特に心を惹かれた見どころを、3つのポイントに絞ってご紹介します。
絵本がそのまま動き出したような映像美
この作品の最大の魅力は、その独特なアニメーションスタイルにあります。原作の挿絵を手掛けた大村百合子さんの、温かく、どこか懐かしいタッチを最大限に尊重して作られています。宮崎監督は、原作の絵が持つ「どこに行くかわからない線」の魅力をアニメーションで動かすことに、多大な敬意と努力を払いました。
私が観た他のジブリ作品とは少し趣が異なり、キャラクターの線はシンプルでありながら、表情や動きは驚くほど豊かです。まるでページをめくるように場面が展開し、本当に絵本の中に入り込んだかのような感覚を味わえます。この手作り感あふれる映像が、物語の純粋さを一層引き立てています。
子どもたちの純粋な想像力の世界
物語の始まりは、ごく普通の保育園の一室です。そこにある積み木が船になり、床が海に変わる。この現実と空想がシームレスにつながる瞬間こそ、本作の真骨頂です。子どもたちの「ごっこ遊び」が持つエネルギーと論理が、見事に映像化されています。
積み木の船から漏れ出した水が、本当に部屋を水浸しにして大海原を生み出すシーンは、子どもの頃の万能感を思い出させてくれます。大人の視点では非現実的でも、子どもたちの世界ではそれが真実です。宮崎監督は、その子どもの内面世界を、驚くほどの説得力をもって描き出しています。
心温まるくじらとの友情物語
「くじらとり」という勇ましいタイトルとは裏腹に、この物語の核は「友情」と「共生」です。子どもたちはくじらを征服の対象としてではなく、出会うべき友達として探します。このテーマは、自然への畏敬の念を描き続けてきたスタジオジブリの哲学そのものです。
捕まえるのではなく、友達になり、遊び、そして感謝と共に見送る。この優しい結末は、観る者の心を温かく包み込みます。暴力的なシーンは一切なく、ただひたすらに純粋な交流が描かれます。この作品を観終えた後、きっと優しい気持ちになれることを私が保証します。
ジブリ短編『くじらとり』の上映スケジュール
この特別な作品を観たいと思った人も多いでしょう。しかし、『くじらとり』は一般的な方法では鑑賞できません。
この作品は、ジブリがファンとの特別な出会いのために作った「たからもの」のような映画です。そのため、DVDやBlu-rayでの販売、Netflixなどの動画配信サービスでの配信は一切行われていません。
ジブリ美術館での上映
7月の土星座のえいがは『くじらとり』。
— 三鷹の森ジブリ美術館 Ghibli Museum, Mitaka (@GhibliML) July 5, 2023
今月の表の看板には、
コナン展の明るい海+くじらとりの大海原と、夏らしく2つの海の風景が並んでいます。 pic.twitter.com/IP0e47ZMoh
『くじらとり』は、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で不定期で上映されます。
ジブリパークでの上映
ジブリの大倉庫「映像展示室オリヲン座」の
— ジブリパーク GHIBLI PARK (@ghibliparkjp) July 10, 2024
9月上映作品は『くじらとり』🐋
保育園の男の子たちが積み木でつくった船は
「ぞうとライオン丸」と名付けられ
くじらとりに出かけます。
詳しくはこちらhttps://t.co/UiTcz1LaGW
9月分のチケットは本日14時発売です。 pic.twitter.com/BEmIVLQz7N
ジブリパークの「映像展示室オリヲン座」でも期間限定で上映されます。
まとめ
ジブリの短編映画『くじらとり』は、わずか16分間で、私たちに子どもの頃の純粋な気持ちと、想像することの素晴らしさを思い出させてくれる傑作です。原作の絵本への深いリスペクトから生まれた温かい映像と、心温まる友情の物語は、観る人すべてを優しい気持ちにさせます。
この作品は、三鷹の森ジブリ美術館とジブリパークという特別な場所でしか出会えません。その希少性が、鑑賞体験をさらに価値あるものにしています。もしあなたがジブリの世界を訪れる機会に恵まれたなら、ぜひこの宝物のような映画を探してみてください。きっと忘れられない感動が待っています。