スタジオジブリといえば、数々の長編映画が有名ですが、実は珠玉の短編作品も存在します。その中でも、私が特に心を奪われたのが、三鷹の森ジブリ美術館とジブリパークだけで上映されるオリジナル短編アニメーション『コロの大さんぽ』です。
わずか15分という短い時間の中に、仔犬の視点から見た壮大な冒険と、心温まる感動がぎゅっと詰まっています。今回は、この隠れた名作『コロの大さんぽ』の魅力について、あらすじや感想、気になる上映スケジュールまで詳しくご紹介します。
『コロの大さんぽ』とは?|仔犬の視点で描かれる壮大な冒険
『コロの大さんぽ』は、スタジオジブリが制作した短編アニメーション映画です。日常にあふれる小さな奇跡と冒険を、仔犬の目線を通して描いた、心温まる物語です。
作品の基本情報|宮﨑駿監督が描く15分の物語
この作品は、巨匠・宮﨑駿監督が原作から脚本、監督まで務めた、まさに宮﨑ワールド全開の作品です。まずは基本的な情報を表で確認しましょう。
項目 | 詳細 |
タイトル | コロの大さんぽ |
---|---|
原作・脚本・監督 | 宮﨑 駿 |
音楽 | 野見 祐二 |
制作 | スタジオジブリ |
公開年 | 2002年 |
上映時間 | 約15分 |
作品のあらすじ|迷子の仔犬コロの小さな大冒険
物語の舞台は、スタジオジブリのある東京郊外・東小金井をモデルにした住宅街です。主人公は、この街に住む少女サワ子に飼われている、元気いっぱいの仔犬「コロ」。ある朝、学校へ行くサワ子を追いかけようと、コロは生まれて初めて一人で家の外へ飛び出してしまいます。
しかし、すぐにサワ子の姿を見失ってしまい、コロの意図せぬ「大さんぽ」が始まります。見るものすべてが新しく、驚きと少しの恐怖に満ちた世界で、コロは必死にサワ子を探して冒険を繰り広げます。一方、コロがいなくなったことに気づいたサワ子も、必死にコロを探し始めます。小さな仔犬と少女の絆が試される、感動の物語です。
登場キャラクター|コロと少女サワ子
この物語の主人公は、愛くるしい仔犬のコロと、その飼い主である心優しい少女サワ子です。
コロ
茶色い毛並みを持つ、元気で好奇心旺盛な仔犬。飼い主のサワ子が大好きで、後を追いかけて冒険に出ることになります。セリフはありませんが、その豊かな表情や仕草が、観る者の心を惹きつけます。
サワ子
コロの飼い主の女の子。コロをとても大切に思っており、いなくなったコロを涙ながらに探します。彼女のコロへの深い愛情が、物語の感動を一層引き立てます。
私が感じた『コロの大さんぽ』の魅力と感想
私がこの作品を観て感じた魅力を、3つのポイントに絞ってご紹介します。ネタバレにならない範囲で解説するので、これから観る方も安心してください。
魅力①|誰もが共感する心温まるストーリー
この作品の最大の魅力は、そのシンプルで普遍的なストーリーにあります。仔犬のコロの視点から描かれる世界は、私たち大人が普段見過ごしているもので溢れています。道端の草花、行き交う自転車、車の音、そのすべてがコロにとっては大冒険の要素です。
私が特に感動したのは、迷子になったコロの不安な気持ちと、必死に飼い主を探す健気な姿です。ペットを飼った経験がある方なら、その姿に涙せずにはいられないでしょう。そして、物語のラストで訪れる再会のシーンは、安堵と喜びで胸がいっぱいになります。セリフが一切ないにもかかわらず、これほどまでに感情を揺さぶられるのは、宮﨑駿監督の卓越した演出力があってこそです。
魅力②|絵本のような温かみのある作画
『コロの大さんぽ』の美術は、まるで手描きの絵本がそのまま動き出したかのような、独特の温かみを持っています。美術監督の吉田昇さんが、色鉛筆やパステルを使って描いた背景は、どこか懐かしく、優しい気持ちにさせてくれます。
この作画スタイルは、名作絵本『はじめてのおつかい』に影響を受けているそうです。この独特のタッチが、仔犬コロの無垢な視点と見事にマッチし、作品の世界観をより魅力的なものにしています。実は、この美術スタイルは後の長編作品『崖の上のポニョ』にも繋がっていく、ジブリにとって重要な試みでした。
魅力③|徹底されたリアリティへのこだわり
可愛らしい作画とは裏腹に、作品の根底には徹底したリアリズムへのこだわりがあります。特に驚くべきは、コロの「声」です。実は、コロの鳴き声は声優が演じているのではなく、本物の仔犬の声を録音して使用しています。
このこだわりによって、コロの存在感が圧倒的にリアルになり、観客はより深く物語に没入します。仔犬特有のよちよちとした動きや、不安げに鳴く声、嬉しそうに駆け寄る姿など、アニメーターたちの観察眼の鋭さにも驚かされます。このリアリティこそが、短い物語に深い感動を与える秘密なのです。
ジブリ短編『コロの大さんぽ』の上映スケジュールと視聴方法
『コロの大さんぽ』は常時公開されているわけではなく、三鷹の森ジブリ美術館とジブリパークの映像展示室で、他の短編作品と入れ替わりで上映されます。
鑑賞できる場所は2ヶ所だけ
この貴重な短編映画を鑑賞できるのは、世界でたった2ヶ所だけです。
- 三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)|映像展示室「土星座」
- ジブリパーク(愛知県長久手市)|ジブリの大倉庫内 映像展示室「オリヲン座」
これらの施設以外で上映されることはなく、前述の通り、映像ソフト化やインターネット配信も行われていません。まさに、現地へ足を運んだ人だけが体験できる特別な贈り物なのです。
ジブリ美術館での上映
今月の土星座のえいがは、『コロの大さんぽ』
— 三鷹の森ジブリ美術館 Ghibli Museum, Mitaka (@GhibliML) July 1, 2024
この映画上映期間中は、“なりきりコロ”の子たちの「キャンキャン!」という声で満ちる中央ホール。
コロのぬいぐるみを大切そうにぎゅーと抱きしめて帰る子たちもよくお見かけします。https://t.co/Mpv6DujvIa pic.twitter.com/rIGIfxWCQd
『コロの大さんぽ』は、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で不定期で上映されます。
ジブリパークでの上映
本日3月10日14時から5月入場分のチケットを販売します。https://t.co/AT4ttrO0c3
— ジブリパーク GHIBLI PARK (@ghibliparkjp) March 10, 2024
「ジブリの大倉庫」映像展示室オリヲン座の5月上映作品は『コロの大さんぽ』です。https://t.co/K5wbp1GGSf
ジブリパークの「映像展示室オリヲン座」でも期間限定で上映されます。
まとめ

『コロの大さんぽ』は、宮崎駿監督が手がけた心温まる短編アニメーションです。仔犬のコロの無邪気な冒険と、サワ子の必死な思いが交差するストーリーは、観る者にやさしい気持ちを届けてくれます。
手描きの温かい背景、愛くるしいコロの動き、現代日本を舞台にしたリアルな描写など、ジブリならではの魅力が詰まった作品です。
ジブリ美術館やジブリパークでの上映が行われるため、実際に足を運んで観るのもおすすめです。気になる方は、ぜひ上映情報をチェックしてみてください!