スタジオジブリには、映画館では観られない特別な作品が存在します。その中でも、私が特に心を奪われたのが、三鷹の森ジブリ美術館とジブリパーク限定で上映される短編アニメーション『水グモもんもん』です。この作品は、宮崎駿監督が原作・脚本・監督を務めた、知る人ぞ知る珠玉の逸品です。
わずか15分という短い時間の中に、言葉を超えた愛と生命の輝きが凝縮されています。この記事では、私が体験した『水グモもんもん』のあらすじや心に響いた感想、そして貴重な鑑賞機会を逃さないための上映情報まで、その魅力を余すところなくお伝えします。
『水グモもんもん』とは?隠されたジブリの名作
『水グモもんもん』は、一般的なジブリ長編作品とは一線を画す、特別な位置づけの作品です。その魅力の根幹を成す、作品の基本情報と物語の筋書きから紹介します。
作品の基本情報|15分に凝縮された世界
この作品は、宮崎駿監督の豊かな創造力から生まれたオリジナルストーリーです。特筆すべきは、作中の音のほとんどを歌手の矢野顕子さんが声だけで表現している点です。音楽と効果音が一体となった独特の世界観は、鑑賞者を優しく包み込みます。
項目 | 詳細 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
---|---|
上映時間 | 約15分 |
声の出演 | 矢野顕子 |
音楽 | 山瀬理桜 |
製作 | スタジオジブリ |
公開日 | 2006年1月 |
言葉のない物語|あらすじを紹介
物語の主人公は、水中に空気の巣を作って暮らす水グモの「もんもん」。彼は、真面目で少し気弱な男の子です。ある日、もんもんは水面を軽やかに滑るアメンボのお嬢さんを見かけ、一瞬で恋に落ちます。
異なる世界に住む彼女に、もんもんは最初、気味悪がられてしまいます。それでも諦めきれず、彼女を見守り続けるもんもん。物語が大きく動くのは、アメンボのお嬢さんが獰猛な魚に襲われた時です。もんもんは危険を顧みず、命がけで彼女を救出します。この勇敢な行動がきっかけとなり、二人の心はゆっくりと通い合っていくのです。
私が感じた『水グモもんもん』の魅力
私がこの作品に深く感動したのは、セリフが一切ないにもかかわらず、豊かな感情がストレートに伝わってくる点です。映像、音楽、そして物語のテーマ性、そのすべてが完璧に調和しています。
心を奪われる映像美|水と光の表現
ジブリ作品の魅力といえば、やはりその圧倒的な映像美です。『水グモもんもん』では、その真骨頂が水中世界でいかんなく発揮されています。私が特に息をのんだのは、もんもんが水中に運ぶ「空気の塊」の表現です。粘り気と弾力を感じるその描写は、まるで生きているかのようで、もんもんの生命そのものを象徴しているように感じました。
水中のプランクトンたちの細やかな動きや、水面に広がる雨の波紋など、画面の隅々まで生命感が溢れています。この作品で培われた水の表現技術が、後の長編作品『崖の上のポニョ』に繋がったという事実も、ジブリファンとしては見逃せないポイントです。
音楽と声が織りなす世界観
この物語の感情を豊かに彩るのが、山瀬理桜さんが奏でるノルウェーの民族楽器「ハルダンゲルヴァイオリン」の音色です。共鳴弦を持つこの楽器の響きは、もんもんの切ない恋心に寄り添い、観る者の胸を打ちます。
そして、矢野顕子さんが声だけで作り出す効果音の世界は、本当に見事です。もんもんが空気を吐き出す「プクッ」という音から、水が揺れる音まで、すべてが温かく、少し不思議な雰囲気を醸し出しています。この実験的な音響設計が、作品に忘れがたい個性と心地よさを与えているのです。
ほろ苦くて甘いストーリーのテーマ性
この物語は、単なる可愛らしい恋物語ではありません。水中と水面という、決して交わることのない世界に住む二人の物語は、「境界線を越えて誰かと繋がりたい」という普遍的な願いを描いています。もんもんは、愛する者を守るために、自らの安全な世界から一歩踏み出す勇気を示します。
同時に、物語には獰猛な魚が登場し、自然界の厳しさも描かれます。美しいだけではない、厳しくも愛おしい自然の中で育まれる恋だからこそ、その輝きは増すのです。私がこの作品から受け取ったのは、「本当に大切なものを手に入れるためには、時に世界を変えるほどの勇気が必要だ」という力強いメッセージでした。
ジブリ短編『水グモもんもん』の上映スケジュールと視聴方法
『水グモもんもん』は常時公開されているわけではなく、三鷹の森ジブリ美術館とジブリパークの映像展示室で、他の短編作品と入れ替わりで上映されます。
鑑賞できる場所は2ヶ所だけ
この貴重な短編映画を鑑賞できるのは、世界でたった2ヶ所だけです。
- 三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)|映像展示室「土星座」
- ジブリパーク(愛知県長久手市)|ジブリの大倉庫内 映像展示室「オリヲン座」
これらの施設以外で上映されることはなく、前述の通り、映像ソフト化やインターネット配信も行われていません。まさに、現地へ足を運んだ人だけが体験できる特別な贈り物なのです。
ジブリ美術館での上映
今月上映している『水グモもんもん』。
— 三鷹の森ジブリ美術館 Ghibli Museum, Mitaka (@GhibliML) April 11, 2024
お隣の井の頭自然文化園の本物の 水グモが、映画の中と同じくらいよく動き、元気でした。
何かワタワタしてましたが、がんばれ〜!https://t.co/W20jUQIbej pic.twitter.com/7mYYllsebS
『水グモもんもん』は、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で不定期で上映されます。
ジブリパークでの上映
ジブリの大倉庫「映像展示室オリヲン座」では 、9月に短編アニメーション『水グモもんもん』を上映します💧
— ジブリパーク GHIBLI PARK (@ghibliparkjp) July 10, 2025
水グモのもんもんはある日、水面を自由に滑るアメンボのお嬢さんと出会い、すっかり心を奪われてしまいます。
果たして、もんもんの思いは通じるのでしょうか…。https://t.co/UiTcz1LIwu pic.twitter.com/sHInFCMCRC
ジブリパークの「映像展示室オリヲン座」でも期間限定で上映されます。
まとめ
『水グモもんもん』は、わずか15分という短い上映時間の中に、ジブリのエッセンスが凝縮されたミニチュアの傑作です。言葉を使わずに、映像と音楽の力だけで愛と勇気の物語を紡ぎ出す手腕は、まさに圧巻の一言です。その鑑賞体験は、他のどの映画とも違う、特別な時間となることを私が保証します。
三鷹の森ジブリ美術館やジブリパークを訪れる機会があれば、ぜひ上映スケジュールを確認してみてください。きっとあなたの心の中に、温かく、そしてキラキラと輝く宝石のような思い出が残るはずです。