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草壁シトヒ
ブロガー
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『ジブリパークができるまで。』第1期・第2期の制作秘話と舞台裏を大公開

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ドキュメンタリーシリーズ『ジブリパークができるまで。』は、単なる施設のメイキング映像ではありません。私がこの作品を見て確信したのは、これ自体がスタジオジブリの「ものづくり」に対する哲学を深く探求する、一つの壮大な物語であるということです。二次元のアニメーションで培われた精神が、いかにして三次元の建築物へと翻訳されたのか、その記録は圧巻です。

物語の中心にいるのは、監修者という立場を超え、本作の主人公とも言える宮崎吾朗監督。彼の鋭いビジョン、妥協なき要求、そして創造における葛藤が、ドキュメンタリー全体を牽引します。この作品を理解することは、ジブリパークそのものを何倍も深く味わう上で不可欠です。パークにある一つ一つのタイルや柱に込められた、膨大な人間の努力と芸術的意図を知ることで、来園者の体験は知的な鑑賞へと昇華します。

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『ジブリパークができるまで。』とは|記録された創造の軌跡

このドキュメンタリーは、ジブリパーク誕生の永続的で信頼に足る歴史的記録として制作されました。スタジオジブリが制作を委託したのは、評価の高いドキュメンタリー制作会社であるテレビマンユニオンです。この事実が、本作が単なる宣伝映像ではないことの証明と言えます。

第1期と第2期の概要

本作はジブリパークの開園エリアに合わせて、第1期と第2期に分かれてリリースされています。それぞれの期間で手掛けられたエリアや建造物の規模には大きな違いがあり、プロジェクトの進化が見て取れます。

項目第1期第2期
対象エリアジブリの大倉庫、青春の丘、どんどこ森もののけの里、魔女の谷
総収録時間約399分約457分
ディスク/話数4枚組 / 全13話3枚組 / 全11話 + 特別編2本
撮影期間1,000日以上1,400日以上
主な対象建造物地球屋、サツキとメイの家、どんどこ堂ハウルの城、オキノ邸、タタラ場
パッケージ版発売日2023年9月6日2024年12月4日
デジタル配信開始日2023年9月6日2024年12月4日
Blu-ray価格 (税込)14,080円10,560円
DVD価格 (税込)10,560円7,920円

この比較表から、第2期で撮影期間が大幅に延長されていることが分かります。これは、手掛けられた建造物の複雑性とプロジェクトの野心がいかに増大したかを示唆しています。

信頼性の高いドキュメンタリー制作

ナレーターに俳優の落合福嗣さん、題字にプロデューサーの鈴木敏夫さんを起用した布陣は、本作が客観的で正当な年代記として構想されたことを示します。制作過程の挑戦や葛藤にも焦点を当てることで、物語に高い信頼性を与えています。私が特に感銘を受けたのは、成功だけでなく失敗や予期せぬトラブルも隠さずに描いている点です。

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第1期|ファンタジーの礎を築く制作秘話

第1期では、パーク初期の3エリア「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の創造過程を追います。物語は単なる時系列の報告ではなく、宮崎吾朗監督が掲げる「本物(ほんもの)」という哲学が、いかにして各エリアで具現化されたかを解き明かすエピソードで構成されています。

ジブリの大倉庫|幻想的な「秘密の街」の誕生

ありふれた温水プールだった建物が、幻想的な空間へと変貌を遂げる過程は必見です。私が特に印象に残っているのは、象徴的な造形物の制作過程です。

中央階段のタイル職人

中央階段の美しいタイルは、宮崎監督のビジョンを実現できる唯一の職人として見出された白石普氏によるものです。彼が手作業でタイルを割り、ガウディ建築を彷彿とさせる鮮やかなモザイクを創り上げていく姿は、ジブリパークの「唯一無二」へのこだわりを体現しています。

ネコバスとロボット兵の質感

『となりのトトロ』のネコバスは、子どもたちが飛び跳ねても大丈夫なように、特別なカーペット生地をパッチワークのように貼り合わせて、あの独特の毛皮が表現されました。『天空の城ラピュタ』のロボット兵は、来園者が触れることを想定し、一部に本物の金属を使用することで、ひんやりとした本物の感触を追求しています。

青春の丘|本物のノスタルジアを求めて

『耳をすませば』の「地球屋」の建設は、多面的な挑戦として描かれます。ここでの見どころは、細部に宿る「本物の音」へのこだわりです。

ゼンマイ仕掛けのからくり時計

宮崎監督は、からくり時計の動力の一部に本物のゼンマイ仕掛けを用いることにこだわりました。デジタルではない「本物の音」を奏でるという一つの要求が、多くの専門家を巻き込む複雑な技術的課題へと発展していく過程は、本作のハイライトの一つです。

幸運な撮影が捉えた生々しい現場

暖炉の設置予定位置を見た宮崎監督が、違和感を覚えてその場で電話をかけ、位置の変更を指示するシーンがあります。これは監督自身が「幸運な」撮影だったと語るように、予定調和ではない創造の現場の緊張感を映し出しています。

どんどこ森|自然と記憶で建てる

このエリアの核は、2005年の愛知万博で建設された「サツキとメイの家」です。この家の存在が、ジブリパーク構想の原点となりました。

どんどこ堂の左官技術

トトロを模した木製遊具「どんどこ堂」の建設は、まさに職人技の結晶です。左官職人の松木憲司氏が、巨大な曲面に伝統的な土壁を塗り重ねるという前例のない難題に直面します。氷点下の気候の中、土壁の仕上げ塗りを行うクライマックスは、ものづくりの根源的な緊張感を伝えます。

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第2期|壮大なる挑戦と生命の息吹

第2期は、プロジェクトの野心が飛躍的に増大する「もののけの里」と「魔女の谷」の記録です。特に「ハウルの動く城」の建設は、技術的にも物語的にもドキュメンタリーの頂点をなします。第1期で確立された哲学が、壮大なスケールで試される様は圧巻です。

もののけの里|神々と人が交わる場所の再現

『もののけ姫』の世界観を再現したこのエリアでは、体験学習施設「タタラ場」や、巨大な「タタリ神」のオブジェなどが作られました。宮崎監督がオブジェに貼るタイルの仕上げ方についてアイデアを出し、より有機的で古びた質感を追求する細やかな演出の過程は、ジブリのディテールへの執念を感じさせます。

魔女の谷|ジブリ建築の最高到達点

このエリアの制作過程は、壮大な建築と、キャラクターの息遣いを感じさせる内装デザインという二つのテーマで展開します。私が最も興奮したのは、やはり「ハウルの動く城」の建設プロジェクトです。

ケーススタディ|動かぬ「ハウルの動く城」

この城の建設は、前代未聞の挑戦の連続でした。

コンセプトは「その後」の城

驚くべきことに、コンセプトの核は映画に登場する城そのものではなく、物語の結末の「その後」の姿でした。「憑き物が落ちて安住の地として谷に降りてきた」という物語的背景が、すべてのデザインを方向づけます。

現実の重みと現場の機転

外装の9割は、テーマパークで一般的なFRPではなく、本物の金属で作られました。この「本物」へのこだわりが、最終的に55社もの専門業者の協力を必要とする巨大プロジェクトへと発展します。工場で作った外装パネルが現場で取り付けられないという危機的状況では、パネルを切断し、脚が壁に「めり込んで」金属が歪んだかのように見せるという創造的な解決策を編み出します。

内装に魔法を吹き込む作業

巨大建築のスケールから一転し、キャラクターが「暮らしている」と感じさせる空間作りの緻密な作業にも焦点が当てられます。『魔女の宅急便』の「オキノ邸」にあるキキの部屋は、宮崎監督の「13歳の女の子が使っている部屋に見えない」という指摘を受け、スタッフが個人的なタッチを加えていく様子が描かれます。これは、見えないキャラクターの存在を喚起する「生命を吹き込む」作業の重要性を示しています。

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まとめ

ドキュメンタリー『ジブリパークができるまで。』は、メイキングというジャンルを超えた、一つの壮大な叙事詩です。宮崎吾朗監督の揺るぎないビジョンと、それに応えようとする日本の職人たちの魂がぶつかり合う様は、見る者の心を強く打ちます。

私がこの作品から受け取った最も強いメッセージは、ジブリパークの「魔法」の正体です。それは巧妙なイリュージョンにあるのではなく、その創造に費やされた、目に見え、触れることのできる、そして深く人間的な努力そのものの中にあります。このドキュメンタリーを鑑賞することで、パークの建造物は単なる背景から、人間の創意工夫と情熱の記念碑へと変わります。パークを訪れる前、あるいは訪れた後にこの作品を見れば、あなたのジブリパーク体験が何倍も豊かになることを保証します。

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